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【感想・書評】「一流になる人 二流で終わる人」野村克也・米長邦雄 より、幸運の女神様論について

ヤクルト、阪神、楽天の元監督、選手としても戦後初の捕手で三冠王を獲得した野村克也監督と、元将棋連盟会長、永世棋聖の称号を持つ米長邦雄先生。
私は小学校の時に野球をやっていた程度ですが、大学生くらいの頃にテレビで解説しているのを見ても野村野球というのに興味を持っていました。
また、趣味将棋なので、米長先生もその独特の毒のある語り口もあり大好きな先生です。
ちなみに、米長先生は「ひふみん」こと加藤一二三先生とは犬猿の仲。
YOUTUBEで「米長邦雄 加藤一二三」で検索すると、面白い動画が見れます。

あまり接点があるような印象はなかったのですが、この二人が共著で本を出しているということを知り興味を持ちました。

今回はこの二人の共著の中から、幸運の女神様とは何ぞやという話を紹介したいと思います。

本の概要

分類としては対談本になると思うのですが、1人が1回に話す量が多く、どちらかというと交換日記のような印象を受けました。
じーさま2人の交換日記っていったい・・・。

タイトルになっている通り、一流になる人と二流で終わる人にはどのような違いがあるのか、ということを主軸に置いて話が進んでいきます。
ただし、お互い気になることを質問し合っているので、話の内容はお互いの近況の話など多岐にわたります。
タイトルの内容について簡潔な回答が得たい、という方にはあまり向かないかもしれませんが、所々になるほどと思う話や考え方が散りばめられており、特にこの2人のいづれかでも好きな方にとっては読んでみると面白い本と思います。

努力の方向性と幸運の女神様論

話の方向も多岐にわたるため、人によって気になる箇所は違うと思いますが、私は”第1章 努力の仕方を変える”の以下の一説が最も心に残りました。

P54. 米長「多くは女神の一度の微笑みを受け、満ち足り、そこに留まってしまうようです。だが、それではせいぜい二流止まりです。さらにもう一度幸運の女神の微笑みを受けるために何をするか。それが一流への道筋になります。」

P57. 野村「私は米長先生のように同じレベル、同じ領域で女神が微笑んでくれるのは一度だけ、さらに女神に微笑んでもらいたかったら、レベルを変え、領域を変えなければならない、と。つまり、自分が変わらなければならない。これが運についての原理原則であるような気がします。」

野村監督の努力と1度目の女神の微笑み

野村監督は南海入団時代、練習量には自信のある他の選手が早朝・夜中に練習に行ってもそこには必ず野村がいると言われるほど、鬼のように練習をしていたらしいです。
何の実績もなく練習生として入団したが一度はクビ寸前までになったこと、貧乏だった子供時代からくるハングリー精神なども関係しているのかもしれません。

生涯成績だけ見ると意外でもあるのですが、バッティングに関し野村監督は自分が不器用であると認識していたらしいです。
例えば、カーブが来ると読んで待っていたところにストレートが来ると、予想と実際の速さの違いに全く対応できない。
それを克服するため、南海入団から6年間は猛烈な反復練習を徹底的に繰り返したとのことです。
その成果もあってか、入団4年目に打率3割、ホームラン30本で本塁打王となったのです。

これだけの努力してこの結果が出た、と、その後も同じ努力を続けたのですが、そこから2シーズンは打率2割5分程度で3割には届かず…。
この4年目の本塁打王が、1回目の女神が微笑んだ年だったのでしょう。

努力の方向性を変える

当時は特に、スポーツは根性論の時代。多くの人ならばそのまま同じ努力をひたすら続けるか、自分には才能がないと腐ったりするものでしょう。
野村監督は薄々気付いていた自分の不器用さを確信し、「努力の方向を変える」ということに取り組むようになります。

生来の不器用さはどうしようもないが、読みが当たったときは打てる。
ならば、読みの精度を上げるように努力すればよいのではないか、ということです。

そこで目を付けたのが、「データ」と「癖」とのことです。

当時はスコアラーがいないチームがあったりと、誰もデータになど目を向けていない時代でした。その中で、南海のスコアラーに頼んだり自分でノートを取ったりしてみると、漠然としたものではなく、確かなものが数字となって表れるのに気付いたようです。

また、「癖」についてはメジャーの強打者が書いた「打撃論」というものを参考にしたようです。それによると、サインの伝達で投げる球種が決まった後の表情やしぐさなどのわずかな変化により、何を投げてくるか70%程度の確率で分かる、とのことです。

このデータの収集と癖の観察に努力の方向を変えることで、3割に届かない残りの5分を埋めようとしたようです。

その努力が間違っていなかったことは、戦後初の三冠王など、のちの野村監督の成績が証明しています。

P61. 野村「努力することは大切だが、肝心なのは努力の方向、仕方を間違えないことです。努力の方向と仕方紗枝間違わなければ、私のように不器用で大したことはない素材でも、確かな実りを手にすることができるのです。」

個人的な感想と思うこと

私はサラリーマンなのですが、今年から株式投資に手を出しています。初めて5カ月ほどはずっと損している状態だったのですが、色々株の本を読んだりして勉強し、6月にようやく利益を出せるようになりました。
最近は勉強の成果も出ているのか、すこぶる調子が良いです。

ただ、ずっとこの調子が続くとは思えません。もしかしたら、今が女神様が1度だけ微笑んでくれている状態なのかもしれません。

成功体験を得たあとに上手くいかなくなったとき、同じ努力を続けるか、別の努力の方向を模索するか・・・。

一回うまくいったからと言って、考えることを放棄して同じ方向の努力のみを続けていては、勝負の世界では幸運の女神様は何度も微笑んではくれない。

野球や将棋とは少し毛色は違いますが、投資も勝負の世界。
言っていることは正しい努力をしましょうねという、当たり前っちゃ当たり前のことなのですが、今後この世界でやっていくにあたって、大いに参考になる考え方でした。

紹介した内容は本書のほんの一部で、他にも多岐にわたるテーマで二人が語り合っています。
皆さんにもどこか参考になる考え方があると思いますので、ぜひ手に取って読んでみてください。

どうもざっと調べた感じだと新品は出回ってないようですあ、Amazon等で中古のものはすぐに見つかります。

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